木造阿弥陀如来像

県指定重要文化財(昭和36年11月21日)
八代市西宮町1069 階下公民館


この仏像は、明治4年まで妙見宮本地堂に祀られ崇敬が厚かったが、廃仏毀釈の時にここ正法寺に移された。身高86.8cm、檜の寄木造で漆箔がみられ、玉眼である。
上品上生の妙観察智印(阿弥陀定印)を結んだ阿弥陀如来の形に作られ、亀蛇框(きだかまち)座のある蓮華座に静座している。豊満な頬や顎・端麗な鼻筋・慈愛と聡明に輝く眼差しの張りのあるやさしい顔立ち、肉づきのふっくらとした胸・腹のあたりから丸味のある両肩・ひじ・膝へかけての曲線美は、藤原貴族を思わせる豊さがある。また、身には絹布のような柔らかな衣をまとい、浅彫りで丸味をおびた衣紋が2条づつ平行して現れ消える。いかにも流麗な感触である。慈悲と威厳の相は、全体の均衡や安定感と調和し堂々たる量感が表現され、平安末期の藤原様の発展的な彫刻美を示す傑作である。
台座は亀蛇を框座にした珍しいもので、蓮華座は大きな挿蓮弁を特徴とし、雲烟文様の舟形光背は江戸期の作である。
また、鎌倉時代の優秀な作で八代で唯一の飛天光光背もあったが、残念なことに腐朽してしまい今は残っていない。

【一口メモ】
廃仏毀釈・・・明治初年の神仏分離令によって起こった仏教の排斥運動。
光背・・・仏像の背後にある光明や火炎をかたどった飾り。
寄木造・・・木像彫刻の技法。胎内を空洞にし、小さい木を寄せ集めて1つの像を作る。

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